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Q&A

1. 歯科医学研究に係る利益相反について

1:産学連携で歯科医学研究を行う場合、何故、利益相反が問題になるのですか?

1:人間を対象とする歯科医学研究を産学連携で行う場合に考慮を要するのは、他の領域の産学連携研究とは異なり、歯科医学研究の対象・被験者として健常人、患者などの参加が不可欠であるという点であります。したがって産学連携より歯科医学研究に携わる者には、一方において研究者として資金及び利益提供者である歯科関連企業などに対する義務が発生し、他方においては被験者の生命の安全、人権擁護をはかる職業上の義務が存在します。同一人におけるこのような二つの義務の存在は、単に形式的のみならず、時には実質的にも相反し、対立する場面が生ずることになります。1人の研究者をめぐって発生するこのような義務の衝突、利害関係の対立・抵触関係がいわゆる利益相反(Conflict Of Interest : COI)と呼ばれる状態です。換言すれば産学連携で行われる歯科医学研究は形式的に見るかぎり、ほとんど利益相反の状態にあると云えます。

2:歯科医学研究とは漠然としていますが、具体的にはどこまでの研究をいうのでしょうか?

2:「歯科医学研究」とは、歯科医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解ならびに患者の生活の質の向上を目的として実施される歯科医学系研究であって、ヒトを対象とするものをいいます。ヒトを対象とする歯科医学系研究には、個人を特定できるヒト由来の試料および個人を特定できるデータの研究を含むものとします。個人を特定できる試料またはデータに当たるかどうかは厚生労働省の「医学研究に関する倫理指針」(平成20年7月31日全部改訂)に定めるところによるものとします。

3:欧米では、歯科医学研究のCOI自己申告はどのようになっているのでしょうか?

3:多くの学会では、演題発表の時とか、学会誌へ発表する場合にCOI自己申告書の開示が義務付けけられています。

4:産学連携により実施されるのは歯科医学研究だけでなく、基礎研究でも広く行われています。基礎研究はCOI申告の対象からはずしてよいのでしょうか?(細則 第1条 第2項 に関連)

4:国の政策として、基礎研究で得られたシーズを臨床へ橋渡しをするトランスレーショナルリサーチが積極的に推進されており、当然に産学官の連携も活発化しております。このような背景の中でどこまでが基礎研究で、どこからが歯科医学研究であるかの定義は難しくなっております。基本的な考え方として、産学連携により行われている研究が基礎的なもの(前臨床試験、人体血液や生体サンプルの解析など)であっても、その成果が臨床での診療(予防法、診断法、治療法など)に影響を与え、資金提供をしている企業や営利団体の利害と関係する事が想定される場合には関係企業とのCOI状態を開示しておくことが望ましいと考えます。何故なら、産学連携による基礎研究成果に疑義が生じても、適正に申告されておれば、学会としても研究者の立場から適切に説明責任を果たすことが可能となるからです。

5:COIの管理は本来,研究者が所属する機関・施設で行うものと理解していましたが、学会のCOIマネージメント(管理)とはどのようなものですか?

5:会員の多くは所属施設で歯科医学研究を実施し、得られた成果を学術大会等で発表します。産学連携にて行われる歯科医学研究には、実施とその発表という2つのステップがありそれぞれにおいて透明性、公明性が求められることから、所属機関・施設だけでなく、学会発表においてもCOI状態の開示が求められると理解して下さい。所属機関・施設に対しては、当該歯科医学研究に携わる研究者全員が実施計画書と同時にCOI自己申告書を施設長へ提出し、当該施設においてCOIマネージメントを受けることが求められております(文部科学省・医学研究の倫理と利益相反に関する検討班「医学研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」)。一方、日本歯周病学会のCOI指針・細則は、本学会が行うすべての事業を対象に、これを行う学会関係者のCOI状態を自己申告によって開示させ、これにより学会関係者の社会的・倫理的立場や責務を明確にすることを目的としております。

6:産学連携による歯科医学研究を行う上で、COIの観点から研究者が遵守すべきこととは何ですか?

6:歯科医学研究に携わる研究者としての義務と歯科医療専門家である歯科医師としての義務が同一研究者に課せられますが、これら二つの義務の対立が現実化した場合、歯科医療専門職にある研究者は、対象である被験者の人権擁護者としての立場を最優先し、被験者の利益のために最善を尽くすべきことは当然と考えられています。したがって、資金提供者の利益のために、またさらに自分の利益維持のために研究の方法、データの解析、結果の解釈を歪めるようなことが、絶対あってはならないし、社会的にも許されない行為と言えます。

7:歯科医学研究を行ったり、その成果を発表したりする場合、企業からの資金提供が悪いような印象を受けますが・・・

7:そうではありません。国策として科学技術基本計画が推進されており、企業から正当な報酬を受けることや、歯科医学研究の推進にむけて資金援助をして貰うこと自体には全く問題はありません。それらの事実をきちんと大学などの施設や、学会などの学術団体が透明性を確保して正確に把握しておくことが重要であり、産学連携による歯科医学研究の実施に疑義があると指摘され、研究者が誹謗中傷された時に、あらかじめ自己申告により正しい情報が既に開示されておれば、学会として社会への説明責任を果たし、適切に対応することが可能になります。

8:COI状態の開示を義務つけることは、企業との産学連携活動を阻害することにつながるのではないですか?

8:COI状態の開示は、あくまで自己申告に基づくものであり、産学連携活動を規制する、あるいは個人への正当な報酬などを減じるための取り組みをしようとするものではありません。歯科医学研究を発展させるには、産学連携を透明性、公明性を持って推進することが重要と考えており、適切に歯科医学研究が行われ、その成果が適正に公表されることが、現場での歯科医療改善に結びつくと考えられています。

9:日本歯周病学会のCOI指針・細則を守れば、法的責任は回避できますか?

9:本指針や施行細則は、あくまでも学会の事業活動を公明性、中立性を担保に実施するために制定されたものであり、この指針などに従ったからと言って、法的責任を回避することにはなりません。また、申告内容の真偽、申告外の利益取得、申告書の保管期限経過後に発生した問題などにおいては法的責任を問われる可能性はあります。一般的に言えることですが、学会の指針や規則・細則には、その上位にある「法令」の適用を回避させる効力がないことを理解下さい。

2. 日本歯周病学会のCOI指針・細則に関して

10:日本歯周病学会は、いつからCOI指針に則って会員のマネージメントを行っていますか?

10:平成26年4月1日からですが、2年間は暫定期間として運用し、その後、完全実施となる予定です。

11:COI指針の意図するところは、何ですか?

11:日本歯周病学会のCOI指針は、社会の理解と協力を得て、産学連携による歯科医学研究をより一層推進するために、歯科医学研究に携わる会員などに依頼者である企業などとの経済的な利害関係を一定要件のもとに開示させ、研究の公平性と透明性を担保させることによって、被験者の人権と安全を守りながら研究を評価し、社会に対する説明責任を果たすことを目的とするものです。

12:日本歯周病学会のCOI自己申告書は、歯科系大学で進められている歯科医学研究のCOI自己申告書と違うのでしょうか?

12:基本的には、同じ考え方であり、COI状態を判断する基準などはかなりの部分が同じです。それぞれのCOI指針は、平成18年度の文部科学省「医学研究の利益相反ポリシー策定に関するガイドライン」と平成20年度の厚生労働省「厚生労働科学研究における利益相反管理に関する指針」において基本的な考え方とマネージメントに関する提案が行われており、多くはそれらに準じた内容で策定されています。

13:学会発表,論文投稿、市民公開講座以外に対象となる学会の事業とは何でしょうか? (細則 第4条 第1項 に関連)

13:政府機関(厚生労働省など)や日本歯科医師会などへの建議、諮問に対する答申、診療に関するマニュアルやガイドラインの作成などが含まれます。これらは本学会名で対応しますが、それらの事業活動に関わるのは理事や委員個人ですので、これらの方々のCOI状態の開示・公開を求めています。

14:申告すべき事項として、NPO法人や財団などの法人組織は、助成金などの研究費を受けた場合の対象として含まれるのでしょうか?(細則 第1条 第2項 に関連)

14:申告対象として、「企業・法人組織、営利を目的とする団体」と明記しており、本学会の事業に関連する企業だけでなく、公益性の高い財団などの法人も当然に含まれますので、基準額を超える場合には自己申告が必要です。

15:COI指針に記載されている開示と公開の違いは?

15:本指針で云う開示は、本学会において発表する会員が学会事務局、理事、評議員、作業部会委員、会員、学会参加者、学会誌購読者に対して自らのCOI状態に関する情報を提供するものと定義します。公開は本学会に関係しない外部の人々や,社会一般の人々に対してCOI情報を提供するものと定義します。自己申告されたCOI情報のどの範囲を開示として扱い、どこまで公開するかは、対象者および対象事業によって異なります。 学会での発表や学会誌への投稿においては、その自己申告範囲は所定の様式に従い、当該発表および論文に関連した企業・団体と発表者・投稿者との間の関係に限られます。また、申告行為自体は開示という解釈です。一方、学会役員などについてはより詳細なCOI状態の自己申告が要求されます。この自己申告は学会に対して開示されるものでありますが,基本的に公開されることを宣誓した上で提出しています。しかし、自己申告された内容を、実際に全て公開することは、個人情報保護法の観点から許されるべきことではなく、社会的・法的に公開が求められた場合には、利益相反委員会で議論し、理事会が公開するべき範囲を顧問弁護士と相談して決定し、これを公開することになります。

16:筆頭著者以外の共著者に開示すべきCOIの申告が発生した場合、学会誌記載方法はどうすべきですか?

16:所定の様式に従い、発表論文末尾の部分に記載することになります。

17:本学会雑会誌関係へのCOI申告に関する取り決めや見直しは利益相反委員会or編集委員会のどちらでしょうか?

17:利益相反委員会と編集委員会とが協議をして取り決めや見直しを行い、最終的には、理事会承認により実施されることになります。

18:今回、策定されるCOI指針は施行された後、改定はなされないのですか? (指針9 指針の改正、および細則第9条)

18:COI指針は、法律ではなく、社会の常識や良識によって判断されるものであり、当然、社会の通念や倫理感が変化すれば、判断基準も変わってきますので、随時改訂して行くことが求められます。本学会の指針と細則も、原則、施行年数年後に見直しをすることが重要です。

19:利益相反委員会の構成はどのようになっていますか? (細則 第6条に関連)

19:委員会は、委員長、副委員長、委員(外部含)若干名から構成されます。学会事務局からは、事務管理責任者が加わり、審査の仕分けや事務的な補助を行います。役員などの自己申告書を直接見ることが出来るのは、委員長、副委員長と事務管理責任者に限られます。審査が必要な場合には、匿名化した後に利益相反委員会で審議されます。もちろん、利益相反委員会委員と事務管理責任者の全員には守秘義務が課せられることは言うまでもありません。

20:役員などのCOI自己申告書は提出された後、どのように取り扱われるのでしょうか? (細則 第5条 第1項に関連)

20:提出された自己申告書は、事務的には個人情報を含む非公開の書類として学会事務局で似て厳重に保管されます。

21:利益相反委員会はどこに位置づけされているのでしょうか?

21:利益相反員会は、理事会並びに他の委員会とは独立した組織であり、理事長の諮問により、第三者的な立場で対応し、深刻なCOI状態と判断された場合には適切にマネージメントするための対応を行う役割を担います。

22:利益相反委員会と倫理委員会との役割の違いは?

22:利益相反委員会は会員や役員などから提出されたCOI自己申告書をもとに重大なCOI状態を引き起こさないようにマネージメントを行い、また指導をする役目を担っており、COI状態に疑義が発生した場合にヒアリングなどにて対応することが重要な役割でアドバイザー的な存在です。一方、倫理委員会は、COI指針を遵守せず、社会的に本学会への損失を与えるような事態が発生した場合に違反者への措置を検討し、理事長に答申する役割を担います。

23:日本歯周病学会でCOI自己申告を行った場合、関連の歯科系学会における発表でもまた、新たな自己申告を行わなければならないのでしょうか?

23:学会ごとに自己申告を行う必要があります。

3. COI申告とその申告書提出に関する質問

24:COI自己申告書を開示することにより、どのようなメリットがあるのですか?

24:COI問題は、マスコミからの指摘とか、所属研究組織内部からの告発による場合が多いのが現状です。COI申告書の記載に虚偽がなければ、会員への誹謗中傷に対して学会は適切に対応することが出来ます。しかし、学会発表や学会誌へ発表において、COI自己申告書の開示内容に虚偽の記載が明らかになれば、会員に対して、むしろ、違反者としの措置を行うことになります。 (細則 第7条に関連)

25:COI自己申告書の出す意味が理解できません。研究者の収入を開示するのは、個人情報保護法に違反するのでは?

25:私たちのミッションは、歯科医学研究によって疾患の診断、治療、予防法などを開発し、出来るだけ早く患者さんの所に届けることですが、歯科医学研究には企業との産学連携活動が欠かせません。当然、歯科医学研究が活発な研究者(歯科医師)には公的に私的にも研究費や講演料、株式収入などが入ってきます。その額があるレベルを超えると社会からの疑義や不信が発せられやすくなります。そのためには組織として、各研究者のCOI状態を適切に把握して、深刻な状態にならないようにマネージメントすることが求められています。

26:配偶者や一親等の親族、生計を共にするもののCOI状態まで申告するように定めていますが,これらの人が開示・公開を拒んだら、どうすべきですか?

26:配偶者などのCOI状態が,申告者の学会事業活動に強く影響するのは一般に理解されているところです。論文投稿や学会役員などの就任時には、COI状態の開示・公開が求められます。ベンチャー企業の立ち上げや運営において配偶者を含めて親族が関わる場合も想定され、配偶者などのCOI状態が深刻な結果、社会的・法的問題が生じた場合には、これらを自己申告されていなかった当該申告者を指針違反者として取り扱い、本指針で定められた措置をとらざるを得ません。以上の点を踏まえて配偶者や一親等の親族に理解を求めて情報提供をお願いすることが大切です。

27:COI自己申告書への記載は、すべて記載すべきですか? (細則 第1条、第2条、第4条に関連)

27:自己申告書の各項目に沿ってある基準額が設定されていますので、有る、無しのチェックをすべての項目について行い、有る場合には、企業名を記載してください。

28:COI自己申告書の項目ごとの基準額は、どのように決められているのですか? (細則 第2条に関連)

28:平成18年に出された文科省検討班「医学研究のCOIポリシー策定に関するガイドライン」と平成20年度の「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」、並びに諸外国での基準を参考にして項目の設定並びに基準が設定されています。

29:株の保有やその他の報酬は,歯科医学研究に関連した企業・団体だけを申告するのですか?(細則 第1条 第1項に関連)

29:学会発表者や論文投稿者については,当該歯科医学研究に関連する企業・団体のものに限定されます。学会役員などについては,本学会が行う事業に関連する企業・団体に限定して自己申告していただくことになります。

30:私は会員ですが、製薬会社の株を30万円相当分持っています。また、先日、製薬会社の主催するセミナーで講演し、10万円の講演料を得ました。これら全てを自己申告しなければいけませんか?また、収入がある度に自己申告するのですか? (細則 第2条-①、④に関連)

30:具体的な申告の時期、申告方法、基準額は対象活動や対象者により異なり、細則に定めています。会員の申告時期は、学会発表時、論文投稿時に、発表する研究内容に関係する企業・団体とのCOI状態を自己申告することが義務づけられています。 一方、役員などの場合には、就任時と、その後1年に1回の自己申告が必要です。株は1年間の利益が100万円以上の場合、講演料は1企業につき年間50万円などの取り決めが細則に定められています。

31:私は歯科関連企業と関係しない出版社からの原稿料が50万円を超えますが、会員としての申告が必要でしょうか?(細則 第2条-⑤に関連)

31:原稿料で申告が必要なのは、原稿料の支払元が製薬会社や歯科医療器具メーカーなどである場合です。しかし、原稿料が出版社から支払われたとしても、関係する歯科関連会社などがスポンサーとして関係している場合には申告する必要があります。

32:ある歯科関連企業から、私の勤める県立病院に奨学寄付金400万円の入金があり、研究担当者名は私になっています。実際には、病院全体の研究費として多くの人が使用しており、物品を購入する場合、病院事務を通して経理がされています。このような奨学寄付金も私のCOI状態として申告すべきでしょうか?(細則 第2条-⑦に関連)

32:奨学寄付金を受け入れた場合,本指針5の(7)にあたると解釈して、1企業から年間200万円以上であれば、受け入れた研究担当者名が申告する必要があります。実際の研究費の使用者が誰であるかに関わらず、研究責任者のCOIとして申告してください。ただし、学会発表、論文投稿の研究内容が、奨学寄付金を納入した企業・団体と関係のない場合には開示する必要はありません。一方、学会役員などは本学会が行う事業に関連する企業・団体に関わるもの全てが自己申告の対象となり、COI状態の開示を求められます。

33:私の所属機関では、企業からの奨学寄付金や治験の入金額の10%が事務経費として差し引かれます。このため、企業から300万円の奨学寄付金をもらっても、研究者には270万円となります。この場合、奨学金の受け入れは、270万円と考えてよろしいでしょうか?(細則 第2条-⑦、自己申告書様式-1、2、3 に関連)

33:申告する奨学金の基準額は所属機関の事務経費を控除した額でなく、企業から入金された全額をもとに記載してください。したがって、この例の場合、奨学金額は300万円と判定されます。

34:COI申告書の中で、奨学寄付金(奨励寄付金など)の項目がありますが、教室(医局或いは講座など)の代表リーダー(教授、准教授など)が受けている場合、どうすべきでしょうか?(細則 第2条-⑦ に関連)

34:学会での演題発表については、申告者が所属する研究室単位が同じであるとか、共同研究のために研究費の使途を一にしている場合、COI状態にあるとして基準額超えていれば、申告してください。役員の場合も同様で、部局内の研究者個人が研究費の提供を受けているが、共同研究を行う立場であれば、申告する方がベターです。しかし、同じ部局内の研究者が全く独立して研究をしている場合には必要はありません。

35:寄付講座の多くは企業の寄付資金によって運営されておりますが、寄付講座所属の教員や職員についてはCOI申告をどのようにするのですか? (細則 第2条-⑧ 自己申告書 様式-1、2,3に関連)

35:寄付講座は深刻なCOI状態が生じる可能性が高いことから、所属する教員などは所定の様式に従い申告する必要があります。

36:「研究とは直接関係のない、その他の報酬」を申告するように義務づけられていますが、製薬会社が提供するテレビ番組のクイズで海外旅行が当たっても申告するのですか?(細則、第2条-⑨に関連)

36:クイズや抽選で当たったものは景品であって報酬ではありません。申告が義務づけられているのは「報酬」であり、「報酬」とはなんらかの労力に対する見返りとして支払われるものです。したがって、景品は申告対象ではありません。本指針5.申告すべき事項(9)に当たる例としては、ある歯科医師が特定の薬をよく処方することから、その薬を販売する企業が謝礼の意味でUSBフラッシュメモリーを歯科医師に渡すことなどが該当します。極端な場合には贈賄行為となり刑事罰の対象となりますので、本指針で扱うものではありません。本指針5.申告すべき事項 (3)~(8)に該当しないが、COI状態となる可能性のあるものを拾い上げるために(9)を設けております。施行細則に1つの企業・団体から受けた報酬が5万円以上を申告することとしております。

37:私は日本歯周病学会の認定医・専門医教育講演での講演を依頼されました。このような場合もCOI状態を開示しなければならないのでしょうか? (細則 第1条に関連)

37:本学会の事業活動である認定医・専門医教育講演や歯周病学の展望、また専門医部会が主催する『セミナー』などは、多くの場合その分野の専門家が演者となります。したがって、これを受講する者への影響は大きいことから、所定の様式に従い、COI状態を発表スライド中に開示して頂くことになります。

38:日本歯周病学会のCOI自己申告書にある基準は、今後変わりませんか? (細則 第9条 に関連)

38:申告するための項目とか基準額などは、当然、社会的な要因や時代の変化に伴い考え方や社会からの見方も変化していくことが予想され、その時代にあった基準に変更していくことが求められます。今回のCOI指針は、「社会的要因や産学連携に関する法令の改正、整備ならびに医療及び研究をめぐる諸条件に適合させるためには、定期的に見直しを行い、改正することができる。」と、9.指針の改正として明記されています。

3-1.会員の講演発表、雑学会誌発表などにおけるCOI申告について

39:日本歯周病学会で演題発表をしようとすれば、COI状態の報告について具体的に、何をすればいいのでしょうか?(細則第1条に関連)

39:学会での発表については、筆頭発表者の発表演題に関係する企業などとのCOI状態を開示することが必要です。開示は当該発表演題に関連した企業との金銭的なCOI状態に限定されます。共同演者のCOI状態まで含めて、発表者全員のCOI状態を開示していただく必要はありません。臨床的に影響力のある歯科医学研究の試験結果については論文として投稿されますので、この段階で著者のみならず、全共著者のCOI状態を開示していただくことになります。

40:何故、学会発表で、筆頭発表者だけが自己申告書の対象なのですか? (細則 第1条 第1項)

40:学会によっては、筆頭発表者だけでなく、すべての連名発表者も申告対象としている場合もあります。今回、初めての取り組みであり、筆頭発表者だけとしていますが、将来的には連名の発表者全員まで拡大することもあります。

41:営利企業や団体などから示された基準をはるかに超えるCOI状態があった場合、学術講演会の発表は出来ないのですか?

41:高額の個人収入を得ているからと言って、講演が出来ないことはありません。発表の時に、適切にCOI状態を自ら開示することによって、その講演内容の評価は参加している聴衆に判断を委ねることとなります。当然、当該の講演者は、発表内容の中立性、公明性が求められることとなり、このような対応がCOIマネージメントの基本と理解してください。

42:抄録をwebsiteで登録する時に提出するCOI自己申告書はどのように扱われるのですか? (細則 第5条 第1項に関連)

42:COI自己申告書は個人情報が多く含まれていますので、学会事務局にて厳重に保管され、情報が関係者以外に漏れることはありません。

43:学会で演題発表する場合、いつ筆頭発表者のCOI状態を申告するのですか?

43:発表する演題の抄録をwebsiteにて登録する際に、COI自己申告書をアップロードして演題登録を終了する仕組みとなります(暫定期間中は、アップロードは必須とはしませんが、多くのアップロードをお願いします)。

44:非会員が本学会の特別講演、シンポジウムなどに招待された場合、本指針は適用されますか? (細則 第1条 第1項に関連)

44:本学会の事業に参加することから、会員の場合と同様に、発表時にCOI状態の開示が求められます。

45:学術講演会などの昼食時や、夕方に開催される企業主催のランチョンセミナー、イーブニングセミナー(シンポジウム)などが開催された場合、発表者には本指針と細則が適用されますか?

45:本指針の「4.対象となる活動」に記載されている様に、それらのセミナーは本学会の事業に含まれ、学会員を対象に行われることから、発表者はCOI状態をスライドを用いて開示する義務を負うことになります。

46:本指針や細則に従えば、本学会事務局に膨大な量の個人情報が蓄積されることになりますが、それらはいつまで保管されるのでしょうか?

46:雑誌や学会での発表者のCOI情報は、論文中や発表時にスライドまたはポスターにて開示されることで完結しますが、「学会発表のための抄録登録時あるいは本学会雑誌への論文投稿時に提出されるCOI自己申告書は提出の日から2年間、理事長の監督下に学会事務局で厳重に保管されなければならない。」と細則 第5条第1項に記載されており、その後は廃棄します。

47:日本歯周病学会会誌への投稿論文で明らかにするCOI状態の期間は、いつからいつまでですか?(細則 第3条に関連)

47:投稿日が7月10日の場合は,前年の7月11日からの1年間に発生した事項について自己申告して下さい。論文がreviseとなった場合は、投稿日の前年の7月11日から,最終版の投稿論文を送付した日までに発生した事項について自己申告書を改訂して自己申告して下さい。

48:日本歯周病学会会誌に投稿するときFormはどのように書けばよいのですか? (細則 第3条、自己申告書様式―2 に関連)

48:投稿論文については共著者を含めた全著者のCOI状態を開示します。その内容は当該論文に関係した企業・団体などとのCOI状態に限定されます。注意すべき事は、筆頭著者(本人)のみならず、本人の配偶者、一親等の親族、または生計を共にする者についても申告しなければならない点です。

3-2.役員などのCOI申告書について

49:役員、学術講演会長、各種委員会のすべての委員長、特定の委員、学会従業員などがCOI申告書を提出する場合の対象となる期間はいつかいつまでになるのでしょうか?(細則 第4条 第1項に関連)

49:税務署への自己申告の対象となる期間は、毎年1月1日から12月末となっており、データとして整理ができていると思われますので、当学会も就任するに際して前年度を対象期間としてCOI状態の申告を義務つけております。

50:本学会の場合は,会頭、理事長、理事・監事の就任日,委員長就任日、委員就任日が、それぞれ異なっています。同一人物が理事となり、ある委員会の委員長となり、また別の特定委員会委員(細則第3号の定義を参照)を兼ねる場合は、3回も申請書を書かねばならないのですか?(細則4条、自己申告書様式―3 に関連)

51:理事、委員長、特定委員会委員などを兼任される場合は、就任が最も早いものについて、就任時に所定の様式に従ったCOI自己申告が必要です。その後、委員長や特定委員会委員になっても、個別に申告する必要はありません。

52:役員の場合、企業からの金銭授受が基準額以上にあれば、自己申告書にすべて記載すべきですか? (細則 第4条に関連)

52:自己申告書にすべての企業を記載しても記載しすぎることにはなりません。申告書は学会事務局に厳重に保管されており、申告内容が特定の者以外に開示されたり、漏れたりすることはありません。故に、自己申告書に記載しすぎるといったことはありませんので、すべての企業を記載してください。

53:理事、各種委員会委員長、委員などは、COI自己申告書をいつ提出するのですか? (細則 第4条 第1項に関連)

53:就任した時点で自己申告書を提出する義務を負います。

54:COI状態の回避について「当該歯科医学研究を計画・実行する上で必要不可欠の人材であり、かつ当該歯科医学研究が国際的にも極めて重要な意義をもつような場合には、当該歯科医学研究の試験責任歯科医師に就任することは可能とする。」という例外規定を設けることは、本指針の理念を弱めることになりませんか? (指針7.回避すべき事項 (3)歯科医学研究の試験責任者が回避すべきこと に関連)

54:本指針の目指すところは、研究者にCOI状態の回避を強制することではなく、また、COI状態が強い研究者に対して歯科医学研究を制限することでもありません。社会にとって有意義で、重要な歯科医学研究を推進することが大切でありますが、活発に歯科医学研究を実施する研究者ほど、COI状態が深刻化するのが一般的です。上記のような例外規定を設けることで、有能な研究者が歯科医学研究に関わる道を開くことが大切と考えており、何らかのマネージメントを行うことにより、透明性、中立性が担保出来れば可能であるとの判断です。本指針では学会の管轄外で行われる歯科医学研究の実施については、会員の所属機関のCOI指針に従うべきであり、学会としての判断を示すにとどめております。

55:ある特定の企業A社から、講演料、寄付金などで高額の収入を得ている場合、A社の薬剤の診療ガイドラインを策定する委員会の委員長になることが出来ますか?

55:社会的な視点からその収入額が非常に高いと考えられる場合には、責任歯科医師になるべきでなく、分担歯科医師として委員に入るのは可能です。しかし、深刻なCOI状態にあると思われる場合には、深刻な状態を緩和するための措置(分担歯科医師の辞退、報告、監査など)を取ることも一つの解決策と言えます。

56:ある保険会社の顧問をしていますが、これも自己申告するのですか? (細則 第2条-①に関連)

56:日本歯周病学会の事業活動を担う役員の場合、当該保険会社との間にCOI状態が発生しないと考えられるのであれば、申告の必要はありません。当該の保険会社に関係する委員会委員長に就任する場合にはマネージメントが必要になる可能性があり、そのような場合に自己申告が求められます。

4. COIマネージメント(管理)の意義と実際について

57:関連企業などから多額の報酬や助成金を得ている研究者は重大なCOI状態にあると思われますが、具体的にどのようなマネージメントをすべきですか?

57:重大なCOI状態が予想される研究者であっても、予め研究に携わる者、研究を評価する学会、研究者がそのような対立する利益状態にあることを社会に対して適正かつ明確に開示することが大切であり、参加する健常者、患者などの被験者が、そのことを十分理解し、熟知したうえで参加し、かつ研究者が研究の方法、データの解析、結果の解釈などを公正に行った場合には、そのような歯科医学研究も、正当な研究として社会的にも容認されると現在では考えられています。

58:COIマネージメントが必要な役員(理事、委員など)とは具体的にどのような役を担う時ですか?

58:役員が、診療ガイドライン策定に関わる委員会、学会誌編集会議、または倫理・医療安全委員会の委員長に就任する場合があたります。利益相反委員会は役員の自己申告書に記載されている企業などとの利害関係について審議し、委員長として活躍して頂く場合に問題がないかどうかを検討します。

59:歯科関連製薬企業等から多額の研究費や奨学寄付金を貰っておれば、自分の専門領域で特殊な治療に関する歯科医学研究を行う場合、Principal Investigator (PI)(責任歯科医師)にはなれないのでしょうか?

59:歯科医学研究においては、「余人をもって代え難し」ということがしばしばあります。もちろん、すべての歯科医師を排除するものではありません。産学連携による歯科医学研究の推進が第一でありますので、どのように深刻なCOI状態をマネージメントすれば、可能かという点をまず考えることが大切です。方法として、責任歯科医師になってもらうが、定期的に報告書の提出とか、ヒアリングを行うなどの方策を使って対応することが可能です。

60:学術大会などで、発表者が基準以上のCOI状態があるにも関わらず、COI開示を適切に行わなかった場合、あるいは、虚偽の申告をした会員が社会から非難された場合、学会はどう対応するのですか?

60:学会発表でもし開示しなくても、それですぐ措置を取るということはありません。しかし、発表者のCOI状態が深刻な社会問題となり、誹謗中傷をされた場合、学会としては発表者の立場から社会へ向けての説明責任を果たせず、個人の問題として対応して頂くことになります。そして、その事が日本歯周病学会の社会的な信頼性とか、権威を傷つける結果になった場合には学会としてそれに応じた措置・処分を本学会の定款に従い検討することになると予想されます。

61:会員から、特定の役員について、企業・団体から提供される寄付金額はいくらかとの問い合わせがあった場合、その詳細を開示するのですか?

61:学会としての対応は、理事会で最終判断を行い、COI指針細則に規定されている基準額以上の寄付金があったかどうかの情報のみ提供し、金額については原則として開示しません。

62:非会員(マスコミなど)から、特定の役員のCOI自己申告書の開示請求が法的になされた場合、どう対応するのですか?

62:学会としては、役員の個人情報の保護を基本に理事会で対応については最終判断を行います。事例によっては、顧問弁護士と相談の上、法的に対応することも想定されます。

63:ある役員が自己申告書の記載内容において虚偽の記載により、本学会の社会的な信頼性を著しく損なった場合、どの様な対応を行うのですか?

63:理事長は理事会の審議を図ると共に、調査委員会を立ち上げて事実関係を含めての真相解明を行い、自己申告違反が検証されれば、その程度に応じて本学会の定款が定める手順により処分されることとなります。

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