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歯周炎の歯周組織炎症を簡便に評価する"PISA"について

PISA原著
PISA計算用フォーマット
PISA活用例

歯周炎における組織破壊の本態は口腔内細菌叢の量的・質的構成異常(dysbiosis;ディスバイオーシス)の結果誘発される炎症反応です。歯周炎罹患組織では歯周ポケットが形成され、歯肉縁下プラークが増殖しています。歯周ポケット内面の一部では上皮細胞の連続性が破壊されることにより潰瘍面が形成されており、易出血性になっています。このような状況においては歯周組織だけでなく全身的に軽微ではありますが、慢性的な炎症状態を持続させ、2型糖尿病などの代謝性疾患、動脈硬化性疾患、自己免疫疾患、がんなど口腔以外の様々な疾患の発症・進行リスクを高めると考えられています。

とりわけ2型糖尿病に関しては、歯周炎と双方向性の関連があり、糖尿病患者における歯周炎の罹患率、重症度は非糖尿病患者と比較して有意に高いことが明らかになっています。こうしたことから歯周炎は糖尿病の第6番目の合併症ととらえられています。逆に歯周炎は糖尿病患者血糖コントロールを悪化させることが多くの研究で示されており、系統的レビューを行った結果、歯周炎治療はHbA1cを0.4%改善することが明らかになりました。このような双方向性の関連と両疾患の罹患率の高さ、糖尿病の合併症のQOLに及ぼす影響、医療経済的な観点から医科歯科連携の重要性が広く認識されるようになっています。

しかし、従来の歯周組織における炎症指標である歯肉炎指数、プロービング時の出血は糖尿病治療に関わる医療関係者には馴染みがなく、かつ定量的に評価する数値ではありませんでした。この炎症がどの程度歯周組織に存在するかを客観的に表す指標があれば、医科に理解し易い形で情報提供できることになります。

近年、歯周ポケットの表面積評価で歯周病の病態、特に炎症の状態を具体的に表現し、それを「共通言語」として使用する試みが開始されています。

Nesseらは、歯周ポケットの臨床的アタッチメントレベル(CAL)、歯肉退縮量とプロービング時の出血の値から歯周ポケット炎症面積を計算する方法、Periodontal Inflamed Surface Area (PISA) を報告しました。この値は歯周炎の重症度のみならず、炎症創の広がりを数値化でき、現在ではそれを指標として算出した炎症表面積と全身疾患へのリスクとの関連を検索する臨床研究が数多く行われています。本邦においても歯周炎患者においてPISAと血中IL-6レベルに有意な正の相関があることが報告されています。

こうしたことを踏まえ、日本歯周病学会は歯周病臨床におけるPISAの記録を標準化し、臨床研究のみならず、医科歯科連携における歯周炎の全身への影響度を判定する指標として用いることを目指します。

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